活動アルバム

文教都市浦和につながる、注目の3冊(2024年4月)

こんにちは、やなか信人です。この春、浦和につながりのある新刊が発刊されました。私が目にした注目書だけでも立て続けに3冊刊行され、ジャンルがまったく異なる作品が、浦和という共通点を通し次々と発刊される様は、コロナ禍を乗り越えた文化芸術が、一気に百花繚乱を迎えたかのように感じさせます。

ご紹介する1作目は、「東京都同乗塔」(九段理江著/新潮社刊)です。浦和生まれの九段さんは昨年、芥川賞を受賞された際にAIを活用して書かれた作品と報道され、大きな注目を集めたことは皆さまの記憶にも新しいと思います。駅近くの書店で開かれたサイン会では、ひと言ふたこと言葉を交わしただけで実力の片鱗を感じさせるオーラをまとっていることを感じられ、これからの大きな活躍が期待されます。

次は「世界基準の英語力」(細田眞由美著/時事通信社刊)。前さいたま市教育長の細田さんは市内在籍の10万人を越える児童生徒が教え子で、現在 うらわ美術館(※改修工事のため、9月まで休館中)の館長を務めておられます。ここでは無償の公教育で子どもたちの英語力を磨いた実践活動が記されていますが、自分の好きな歌や映画を徹底的に繰り返し聞き声に出す練習や、歩きながら目にとまったものを英語に置き換える「独り言大作戦」といった、全国どこにお住まいの方でも世界基準の英語力を身につけるアイデアが載せられています。そして対談ではグローバル化や普及するAIをどのように捉えていくかについても触れられています。英語を通して子どもたちが国際人に必要となる世界基準の「人間力」を磨くヒントとなる一書です。

3冊目は「財政と民主主義」(神野直彦著/岩波新書)です。戦前、平和の志を持ち創刊された岩波新書の新赤版が年頭2000点を突破しました。日本を代表する財政学者で市内に居を構える神野さんの新刊は、そのラインアップに彩りを添え、時代の輪郭を描き出し未来に光を照らす一書となりました。経済活動に関わりのある民主主義のあり様にもスポットを当て、主権を持つ民衆の共同意思決定が財政を機能させ、分かちあいへのパラダイムシフトによって人間らしく生きられる社会に再構築していくことの必要性を呼びかけています。なお、私も親交を深めてきた新進気鋭の財政学の論客で知られる井手英策さんはその直弟子で、この4月に小学館新書より新刊「ベーシックサービス」を出し、ソーシャルワークの重要性について触れられています。両者の思想の共通性や財政学の広がりにも気づかされますので、あわせてのご一読をおすすめします。

浦和に関わりのある活字文化が花開くことは、かつて雑誌編集に携わったことのある私にとって大変喜ばしいことです。文化芸術都市に咲く創造の花が市民の皆さまの心を豊かにしていくことに大きな期待を寄せるだけでなく、これら作品の力をお借りして、文化、教育、財政の視点から市政に生かせるよう、取り組んでまいりたいと思います。

さて、先日の人気テレビ番組「笑点」で新レギュラーとともに新しく真打ち昇進となった方々の紹介がありました。そのなかの一人、春雨や風子改め雲龍亭雨花師匠は浦和に縁があり、積極的に市民活動を行ってこられるなか私も知遇を得ました。文教都市浦和には、映画、落語、伝統芸能、音楽などに関心を寄せ、活動され、学び合う多くの市民の皆さまがおります。こういった文化芸術に触れることのできる環境もしっかりと整えてまいりたいと思います。

浦和駅正面のビルには市民活動、生涯学習、コミュニティ拠点として賑わう市民活動サポートセンター、浦和コミュニティセンター、中央図書館が入居する(2023年撮影)

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