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さいたま市が舞台となった「黒蝶貝のピアス(砂村かいり著)」を読んで

こんにちは、やなか信人です。

「埼玉はなんて容赦なく暑いのだろう」と主人公の環が思ったのは、夏のさかりを迎える前の梅雨時だった。この4月発刊された砂村かいりさんの「黒蝶貝のピアス(東京創元社刊)」はさいたま市を舞台にした作品で、主人公の職場の大宮駅周辺や実家のある武蔵浦和が描かれている。それを知った私は、すぐさま図書館でこの本を取り寄せた。

「軽やかな筆致と丁寧に書き込まれた人物造形で織りなすドラマが魅力」と、作者は評されている。自分自身と向き合い他との距離感に一喜一憂し葛藤する物語のなかの男女は、私よりも20歳も30歳も若い。その若さの特質である「新人らしい熱心さ」「気遣い」「勘違いや空回り」、舞台にたったときの「ときめき」や「高揚感」までもが褒め称えられている。さわやかな光に彩られた青春ストーリーを期待し手に取った読者のなかには、この本の内容が幾分重たく感じられたかもしれない。しかし私にとって、その重たささえもバネにして力強く一歩前に踏み出す前向きさが気持ちの良い読後感となって残った。

私は一度購入した本はどうしても手放すことができず、必要なものだけを家に置かないと部屋の床が沈みかねない状態だ。それでも、この一書は手の届くところにおいて人に勧めていきたいと思った。

※書籍について、詳しくは以下の版元ホームページをご覧下さい(立ち読み、購読可)黒蝶貝のピアス – 砂村かいり|東京創元社 (tsogen.co.jp)

 

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